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洋裁CADのしくみ

洋裁CADを使い始める前に、洋裁CADとはどういうものかを知っておくと、効率よく習得できます。
洋裁CADは他の2次元CADとは操作方法が全く異なります。
私はサラリーマン時代に設計の仕事をしていましたが、一時期3次元CADを新人に教える仕事もしていました。

たくさんの人を教えるうちに、習得の早い人と遅い人の差がはっきり分かれることに気づきました。速い人はとても速く、遅い人はなかなか理解できず、差が極端なのです。
理由は「3次元CADのしくみ」を理解することでした。すぐに理解できた人はスラスラと先に進むことができます。
理解できていない人は、「なぜこんな操作をするのだろう」と、教科書に書かれた操作の理由が理解できずに書かれていることを丸暗記するだけなので応用ができないのです。
洋裁CADは2次元CADですが、仕組みは3次元CADに近いです。使ってみる前にしくみを理解してから練習に取りかかることをお勧めします。

手書き製図、2次元CAD、洋裁CADの違い

手書き製図、2次元CAD、洋裁CADを比較してみましょう。
手書き製図の場合、製図する人は鉛筆や定規といった道具を使って紙に型紙を描きます。
手書き製図の概念図

手書きの良いところは、手軽に速く、新たにCAD覚える必要もなく、描けることです。
しかし、書き始める前にあらかじめレイアウトをよく考えておかないと、描いているうちに紙をはみ出してしまったり、消しゴムで消して破いてしまったり、 紙を汚してしまったり、不正確だったりします。

2次元CADは、鉛筆や紙、定規などをパソコンに置き換えたものです。
製図する人はマウスを使い、モニターを見ながら、パソコンの中に型紙を描きます。
2次元CADの概念図

CADを使えば、あとから印刷する紙のサイズを選べますし、はみ出さないようにレイアウトもできます。線を消しても紙が汚れることはありません。
その上、型紙に変更を加えて新たな型紙を作りたいとき、ファイルをコピーして修正することで0から描き直すことなく別の型紙を作ることができます。線も正確に引くことができます。
しかし、違うサイズの服を作るときはどうでしょうか、同じデザインであっても人間が手を使って描き直すので手間がかかってしまいます。

洋裁CADは鉛筆や紙などの道具に加え、描く手もパソコンに置き換えます。
洋裁CADの概念図

線を描く作業もCADの仕事にします。こうすれば型紙の変更が簡単にできるようになります。
完成した型紙のデザインを変えて別の型紙にしたり、サイズ違いを作ったり、原型を差し替えて女性用を男性用に変えたりすることができるようになるのです。

洋裁CADの製図は手順書を書くこと

製図する人は線を描かず、描き方を記した手順書を書いて洋裁CADに渡します。

洋裁CADは受け取った手順書を読んで、その通りに型紙を描きます。


具体的な例を考えてみましょう。
単純に直線を引きます。座標を指定して2つの点を描き、そのあと2点を結ぶ直線を描くよう、手順書を書きました。
すると、洋裁CADは手順書を読んで点と線を描画します。
直線

この線を変更します。点0の座標を書き換えました。
すると、洋裁CADは手順書を読見直して点と線を再描画します。
変更した直線



これだけではメリットは感じられませんね。では、原型型紙を製図する場合はどうでしょうか。
変更前

変更後

最初の1行、バストの数値を変えただけで、その後に描かれる点や線、数値がドミノ倒しの要領で変わってゆき、バスト違いの原型が一瞬で変更されます。
実際の操作では、下の動画のようにマウスホイールを転がすだけで原型を自在に変えることができます。
手書きや従来のCADでは、数値を変えるたびに人が描き直しますから、少し変えるだけでも多くの時間が必要になってしまいます。この点が洋裁CADの優れている点です。
原型の変形


洋裁CADの利点と欠点

洋裁CADを使えば、デザインを考えながら型紙を描いたり、後から型紙を手直ししたりすることが簡単にできます。
子供の成長に合わせて服を少しずつ大きくしてゆく時にも、再度一から製図しなおす必要はありません。
原型の差し替えができるので、同じデザインの服を友達用に変えたり、女性用を男性用に、子供用を大人用にすることもできます。
線の長さを他の線と同じに設定できるので、袖ぐりと袖山、前身頃と後身頃の縫い合わせ部など、自動的に一致させることができます。

しかし、利点の裏返しは欠点になります。手順書の一部を書き換えるだけで型紙全体を変化させることができますが、できるように設定するのは、製図する人です。
ある寸法が変わればどの線が連動して変わるのか、人が決めなければいけません。
手順書を書き間違えれば、間違った型紙が描かれます。洋裁CADは手順書通りに書くだけで、自分の意図したとおりに型紙が描けているのかは、手順書を書いた本人が確認しなければいけません。
下の動画は原型型紙のバストの値を800から2400まで強引に変更してみたものです。
原型型紙の変形


また、洋裁CADは他の2次元CADとは違い、エラーが発生する場合があります。
例えば、交差する2直線交点に点を設定したとします。手順書の上の方が書き換えられ、2直線が平行線になった場合、交点は存在しなくなるので、エラーが発生します。
洋裁CADのエラー

エラーを修正するとき、多くの場合エラーが起きた位置ではなく、その上流の行を直すことになります。勘違いして別の行を修正してしまうと他のところでエラーが起き、 訳がわからなくなることになりかねません。エラー補正には手順書がどういう流れになっているのか、どういう考えで構成されているのかを理解しておく必要があります。
製図する人は、手順書をよく考え理解して書いておく必要があるのです。

洋裁CAD的な製図の例

洋裁CADの製図方法を「手順書」に例えて説明しましたが、これは新しい考え方ではありません。
服の型紙を製図したことのある人であれば、おそらくこの手法で製図した経験があるはずです。
「原型型紙」の製図です。同じ文章を読んでその通りに製図しているのに、完成した型紙はなぜ個々の人にフィットした形になるのでしょうか?
文化式の原型製図では、最初にバスト、ウエスト、背丈の寸法を決めます。この寸法が、後工程でひく線や点に影響を与えることで、異なる形状の原型型紙が出来上がるのです。
これは先に説明した「手順書」と同じ手法です。
実際、上の動画で動かしている原型型紙は、教科書の記述通りに洋裁CADへ入力したものです。
こうした設計手法のことを機械設計では「パラメトリックデザイン」と呼ぶのですが、この手法はアパレル分野に当てはめても非常に有益なのです。
文化式原型製図の教科書

最終更新日: 2017-09-25 09:26:00

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