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アパレル3D-CADの将来像

このページは、2019年11月30日に原宿のTokyo Fashion technology Labにて「機械エンジニアから見たアパレル3D-CADの展望」という演題でお話したときの内容のまとめです。
文章は覚書をそのままコピペしたので変なところもあります。動画を多用したのですが、HP版は動きません。

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表題

アパレル3D-CAD表紙

機械エンジニアから見たアパレル3D-CADの展望という題で、機械設計用の3D-CADとアパレル3D-CADの機能を比較し、どのようなタイプのアパレル3D-CADが将来現れるかを考えてみます。

機械設計用の3D-CADとアパレル用の3D-CADの機能の違い

機械設計用の3D-CADとアパレル用の3D-CADの機能の違い

まず機械設計用の3D-CADとアパレル用の3D-CADの機能の違いを考えてみたいと思います
3点比較してみます
一つは三次元化の手法
二つ目がアセンブリと縫製
3番目がパラメトリックとグレーディングということでお話をします

3次元化の違い

3次元化の違い

まずは3次元化の違いです。
左が機械用3d-CADの三次元化の方法を示しています。
基本的は断面を書いてそれに厚みを付けるということで三次元にします
断面を真っ直ぐ伸ばす場合、回転させる場合、軌道に沿って伸ばすといった方法があります
他にもありますが、この方法で8,9割の3Dモデルを作ることが出来ます
機械部品は寸法公差が1/100mmなどとシビアーなので、寸法をはっきり定義する必要があります、
ですので、断面も厳密に描きます。
三次元CADによく似た3Dモデリングソフトがありますが、これとCADはこの点で違います
アパレルの3D化は、パターンを曲がられるようにすることで3次元化します。
布にも厚みはありますが、あまり重要ではありません 具体的には、2次元で製図したパターンを、小さな3角形に分割して曲げられるようにします。
三角形の頂点同士をばねで繋ぐことで、布の質感を変えることが出来ます。

アセンブリと縫製

アセンブリと縫製

部品同士を組み合わせる方法を考えてみます
機械設計では一つの部品で一つの製品ができていることは少ないです。
大抵の場合たくさんの部品を組みあわせて、製品としています
?CAD上で部品を組みあせわることをアセンブリと言います
部品と部品を組み合わせてアセンブリを作り、それをまた他のアセンブリの部品として組み込みます
ですので三次元CADでは製品モデルがアセンブリの入れ子構造になっています
左が機械部品のアセンブリを示しています
平面を合わせたり、軸をそろえたり、面同士の角度を設定したりして、部品同士の位置関係を固定します
服の場合は見頃同士を縫い合わせることで服に仕立てます
服の場合は入れ子構造はありません

パラメトリック手法とグレーディング

パラメトリック手法とグレーディング

パラメトリック手法とグレーディングというお話をします
パラメトリックという設計手法が現在の3D-CADの主流になっています
これはアパレルのグレーディングに似ていますが、原理的には異なっています
図は木工で作る棚の3Dモデルです
高さ900ミリで設計したものを1200mmに設計変更しています
棚の位置や幅も変えることが出来ます
パラメーターを変更することで形状を調整できることがパラメトリックの特徴になります
グレーディングと異なるのは、変更したパラメーターで最初か製図し直すことです。
グレーディングは後から書き足すので、この点が違います。
パラメトリック設計手法は三次元CADに必須の機能ではありません
以前はパラメトリックでないCADとパラメトリックCADが存在していましたが
パラメトリックのCADが次第にシェアを伸ばしてきて、現在ではパラメトリックが主流になっています
パラメトリックは判りにくいのが欠点ですが一度モデルを作ったら様々な派生モデルを展開利点があるので、シェアを伸ばしたのだと思います。
二次元CADでもパラメトリック手法を導入できますが、パラメトリック二次元CADはほとんど存在していません
私の作った洋裁CADはパラメトリック二次元CADです
他にSeamly2Dというオープンソースのアパレル二次元CADがあります
パラメトリック二次元CADがアパレル用であるのは、グレーディング機能を兼ねたりできるためと思われます。

パラメトリック設計の例-原型製図

パラメトリック設計の例-原型製図

パラメトリックとアパレルは関係ないと思われるかもしれませんが、服飾の学校に行かれた方は体験しているはずです
原型型紙の製図方法がパラメトリックな製図方法になります
原型型紙とは、服の型紙の型紙なるような役割の物で、着る人にピッタリなサイズの服と言えます。
原型型紙に一定の余裕を持たせて服の型紙を描くことで、その人用の服のパターンを作ることが出来ます
原型型紙の製図方法を説明します
最初に自分の寸法を測ります。文化式であれば、バスト、ウエスト、背丈になります
次に教科書に書かれた手順で線を引きます
すると、自分サイズの原型型紙ができます
2番目の手順は同一なのに、最初に入れるパラメーターが変わることで結果が変化します。
この手順をCADに入力し、CADに製図作業を行わせるようにしたものが、パラメトリックCADになります。
パレメーターを変えるだけで、自動的にパターンが変わるようになります
では動かしてみましょう

パラメトリック設計の例

パラメトリック設計の例

複雑な例を見てみましょう
これはウエスト切り替えワンピースのパターンです。
一つのパラメーターを変えることで、複数の身頃の形状が同時に変わることがわかります。
特にバストの値を変えると、ほとんどのパターンが変わります
動いているように見えますが、実際にはパラメーターが変わるたびに、CADが
1から製図し直しています

アパレル3D-CADの姿

アパレル3D-CADの姿

これらの違いを踏まえて、アパレル3D-CADはどんな姿になるか、考えてみます。
これはアパレル3D-CADの設計工程を描いた図です
左から順に作業します
まず二次元のパターンを作り、それを曲げられるようにして縫い合わせて3Dを作りシュミレーションをします
3D上でパラメーターを変更したりして調整した後、二次元のパターンデータを出力し二次元の布を使って三次元の服を仕立てます
三次元CADと言ってもメインは二次元で三次元のシミュレーション機能を追加した物がアパレル3次元CADになると思います
なぜかというと、二次元の素材である布を使うので機械用の三次元CADに比べ二次元の要素が重要であるためです
設計工程から次元数を見ると2次元3次元2次元3次元の順になります
CADの例を見てみましょう
クレアコンポ2はパラメトリックCADではありませんが3D機能が追加できます
サイトを見ると三次元を追加した場合の設計工程を見ることができます
3次元と2次元の間でループができていますがこれはパラメトリックではないので3次元では修正できず、二次元に戻らなければいけないためでしょう
パラメトリックCADであれば三次元を見ながらパラメーターを変更して形状を修正することが可能になるので、ループもなくなります
洋裁CADは2次元のパラメトリックCADになります
一応3次元モードもありますがまだ実用的な段階ではありません
clo3DはCADというよりも三次元のシュミレーションソフトに近いと思います
サイトの動画を見てみますと色々なことがあってきて驚きますが,
パターンの変更は袖やスカートの長さくらいでバストなどの複数のパターンにわたる変更にはやはり対応できていないようですこれもパラメトリックを導入すれば可能になります

3D化で出来ること

3D化で出来ること

3Dでどんなことができるかを考えてみます

パターンチェック
3D上で縫製することで、パターンの不具合を見つけることが出来ます
機械設計の場合は部品同士の干渉などをするのですが、
二次元の頃はこの干渉チェックが難しくて試作をしても組めない場合が多かったです
西暦2000頃に三次元CADが導入されると部品同士の干渉チェックが非常に簡単になり、試作の回数が減って設計期間が半分ぐらいになりました
非常に大きなインパクトがあったのですが、?アパレル3DCADでは大きなインパクトはないかなと思います

縫製手順の確認
縫い合わせる順番を確認したりすることができます
機械設計では組み立て手順が非常に重要で大量に生産するものは1秒でも組み立てが遅いと数10万秒のロスになるので組み立て手順の確認はとても重要でした

デザインチェック
意図したデザイン通りに形ができているかどうかをサンプルを縫わずにシミュレーションで確認することができます
サンプル縫製の時間や費用を節約することができます

量産デザインの選定
いくつかのデザイン案から量産するデザインを決める時に,これもサンプルを作らずにシュミレーション画面を見て選択できるようになります

EC向けサンプル
ネット上で販売する時に3D画像をサンプルとして使うことができます

さらにパラメトリックを追加すると

デザインの変更修正
3D画像を見ながらパラメーターを変更して修正することが可能になります

個人に対応したパターンの作成
キリストの3DデータをCADに取り込みそのデータに服を着せた上でパラメーターを調整すればその人にぴったり合った服のパターンを作ることが可能になります

個人のデザインへの参加
3DCADをお店に置き隣にに3Dスキャナーを置いてお客さんをスキャンし3DCADの中に入ってもらいます
服を選んで来てからパラメーターを調整してサイズを合わせその後お客さんの好みでスカート丈を調整したり袖を選んだりすることができるようになります

1次元の素材を扱うタイプのアパレル3D-CAD

1次元の素材を扱うアパレル3D-CAD

ここまでのお話は前提として布を使った服のお話でした
布は二次元なので二次元CADに近い三次元CADになりますというお話をしましたが
服は布以外の素材でも作ることができます
ニットがその一つです
ニットは1次元の糸を使って三次元の服をつくることができます
この場合は二次元にこだわる必要は全くないので三次元のモデルから1次元の糸を使って三次元の服を作ることができるようになると思います
島精機のサイトを見てみます?
島精機のデザインシステムを見てみるとどうも三次元CADを使うようではないのですがいずれその方向に行くのではとおもいます。
ホールガーメントのサイトを見てみると
今までは二次元の縫い合わせでニットを作ってきましたが今後は三次元の服をそのまま編みあげるという意思がみてとれます

ニットの服を設計するためのデザインシステムは、布の服作りとは独立して進化してゆくのではと思います。

3Dを2Dに変換するタイプのアパレル3D-CAD

3Dを2Dに変換するタイプのアパレル3D-CAD

さらに他の可能性を考えてみます
先ほどは3次元1次元3次元という設計工程でしたが、1次元の糸を2次元の布にに差し替えたらどうなるでしょうか
ぬいぐるみの設計する時にはこの3次元2次元3次元の組み合わせが良さそうに思えます
Fusion360という三次元cadとイグザクトフラットというアドオンソフトを組み合わせるとこの設計をすることができます

3D-2D変換の例 1

3D-2D変換の例

こちらは実際に私が作ってみた例になります
簡単なぬいぐるみと帽子です
左が3Dモデル真ん中あたりで曲面を二次元のパターンに変換しています
出来上がったものが右の写真になります
うまくできているように見えますが実は問題があります
帽子なのですが被ってみたら小さくてきつかったのです
曲面は平面に変換すると必ず歪みます
世界地図が良い例です球面の地球を平面に正確に変換することは不可能です
色々な図法がありますがすべてどこか歪んでいます
同様に三次元CADの曲面のサーフェイスを平面化すると歪んでしまうことは避けられません

3D-2D変換の例 2

3D-2D変換の例

こちらは試作した鞄になります
三次元の曲面を平面に直してそのまま置いたのが左のパターンになります
一見うまくできているように見えますが見合わす辺の長さ,ここでは赤い線と緑の線になりますが測ってみると長さが2割ほど違っています
同じ長さになるように修正したのが右のパターンです
大きさが全く異なってしまいました
修正なしでは鞄に仕立てることは不可能です

三次元を二次元に変換するこの方法はぬいぐるみには適用できそうですが
服用には変換後に再度転換するなど修正する必要がありそうです

まとめ

将来のアパレル3D-CADの姿

ではまとめになります
アパレル三次元CADにはいくつかの種類ができそうだなというのが今日のお話です
布の服は2次元3次元2次元3次元っていう工程で作る
ニットは3次元から1次元を通して三次元を作ってしまう
ぬいぐるみのような物は3次元2次元3次元でも作れそうです

もう一つはパラメトリック設計手法の重要性です
3次元だけでなくパラメトリックをプラスすることでできることが増えていきます
機械設計ではパラメトリック手法のCADが主流になった経緯があるので
アパレルCADの世界にもいずれパラメトリックの設計手法が浸透するのではないかと思っています

洋裁CADについて

せっかくなので洋裁CADの紹介をさせてください
洋裁CADは私が一人で作っているフリーソフトです
アパレル用のパラメトリック二次元CADになります
このCADの特徴をいくつか紹介したいと思います

パラメトリック+レーザーカッター

パラメトリック+レーザーカッター

次のバージョンアップでレーザーカッターでのデータ出力が可能になります
これでパターンを紙に出力せずに直接布を裁断できるようになります
パラメトリックcad?+ レーザーカッターの組み合わせは同一デザイン多サイズの生産に有利になります
?AKBのような全員が同じデザインの服を着ているけれども全員が体格が違う服を揃える場合
このシステムでは最初にパターンを製図した後
?着る人のパラメーター入力して裁断をに繰り返すことで、素早く作業することが可能になります

テキスタイルパターンの出力

テキスタイルパターンの出力

テキスタイルパターンを出力することも可能です
パターンを画像ファイルとして出力してファイルをテキスタイルプリントサービスの会社に送ります
すると10日ぐらいで印刷済みの布が届きます
写真の例はゲームの世界から服を現実の世界に持ち出してきたイメージの服です
「レベル1旅人の服」という名前を付けています
こうしたデザインのブランドを立ち上げたいと思っているのですが一人ではちょっと無理です
今日は左の赤い服を持ってきましたので、興味のある方後でさわってみてください

昔のパターンはパラメトリック

最終更新日: 2019-12-19 11:24:03

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Author: Tomoyuki Ito

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