【個人向け】アパレルCADの選び方
個人でアパレルCADを使ってみたいなと考えている人向けの案内です。
「アパレルCAD」で検索するとCADの選び方のページが上位に上がっているのですが、読んでみると今一つ書き足りてないなという内容ばかりなので、じゃあ自分で書こうってことになりました。
一応公平な目で書いたつもりではありますが、私自身洋裁CADというフリーソフトを作っているので、やっぱり洋裁CADに肩入れした書き方になっています。
その辺割り引いて読んでいただければと思います。
動機からCADを選ぶ
「面倒くさいからCADで簡単にパターンをつくりたい」
おすすめCAD なし
よくある誤解ですが、CADを使ってパターンを簡単に作ることはできません。
CADを使ったらなんかすごいことができるようになる、ということはありません。
「製図の仕方がわからないのでCADでパターンつくる」
おすすめCAD 手書き製図
CADは製図するための道具なので、製図の仕方が分からないとCADも使えません。
CADを始める前に製図方法を覚えておきましょう。
製図を覚えるには手書きでパターンを引いてみるのが一番です。
交通ルールが分からないから車で移動したい、というようなものです。交通ルールを知らなければ車の運転もできません。
自動運転車が実現すれば乗るだけで目的地に行けますが、CADの世界ではまだそのような自動運転技術は存在していません。
「パターンのトレースに使いたい」
おすすめCAD パタパタモードくん
無料のCADを使うのが良いでしょう。パタパタモードくんを始め普通の2次元CADは鉛筆や消しゴムをマウスに、紙をモニターに取り替えた感覚で使えるので、
洋裁CADや三次元CADよりも敷居が低く習得に時間がかかりません。
一般的に二次元CADは皆そうですが、書いたパターンのサイズを変えるのは苦手です。
洋裁CADでは簡単に変えることができるのですが、変更する場面が少ないのであれば、パタパタモードくんの方が効率よく作業出来るでしょう。
汎用の2次元CADは曲線が貧弱だったり分割印刷機能が弱かったりするのでアパレルには向きません。
「使用頻度が少ない」
おすすめCAD 手書き製図
手書きでパターンを書いているけれどもそろそろCADを使いたい。だけどたまにしか製図しない、という人はCAD覚えても次に使う時に使い方を忘れてしまい、思い出すのに時間がかかることになりかねません。
使い方を思い出すのに時間がかかるのであれば、手書きで書いたほうが早く済みます。
「デザインを考えながら製図する、作ったパターンを簡単に修正できるようにしたい」
おすすめCAD 洋裁CAD
洋裁CADは他の二次元CADと異なり、パラメトリック手法という方法で製図します。ユーザーが製図をするのではなく、CADが製図します。
ユーザーはCADに対して製図方法を指示します。このため指示を変更するだけでCADが一瞬で書き直してくれます。
パターンの変更は簡単にできますが、的確な指示を書くのが難しいです。
人にお願いして思い通りのパターンを書いてもらうのが難しいように、CADに対して的確な指示を出す必要があります。
指示が変だったり矛盾していると、変なパターンになったり、エラーが出たりします。
他の二次元CADよりも便利ですが始めるには敷居が高いのが難点です。
「就職準備のためにCADを覚える」
おすすめCAD クレアコンポ2など、プロ用のCAD
仕事で使うCADは、既に職場で決まっているので、就職したい会社が使っているCADを覚えます。選択肢はありません。
就職先が決まっていないのであれば、最もシェアの高いクレアコンポを選べば良いでしょう。
フリーソフトは企業ではほとんど使われていないので、覚えてもあまり意味がないです。
永続性から考えてCADを選択する
CAD間のデータ互換性はほとんどありません。なので特定のCADで作ったパターンデータは、そのCADを使わなければ開けません。
自作のパターンデータは、ある意味自分の資産になります。
CADは宝箱のようなものです。パターンデータはその宝箱から出すことができません。
箱の鍵が壊れてしまって開かなくなると、中の財宝はもう二度と取り出すことができなくなってしまいます。
何か事情があって使うCAD変える場合でも、データの移動ができないため、昔のデータは捨ててしまうことになります。
ですので、CADを始めるにあたっては、自分に合ってるかをよく確かめると同時に永続性も考慮して決める必要があります。
洋裁CADのように個人で作っているようなCADは、製作者が興味をなくしてしまったり急に死んでしまったら終わりなので、永続性には問題があります。
私の場合は完成後死ぬ前にはソースコードを公開しようとは思っていますが、約束するものではありません。
オープンソースで、複数の人間が開発に携わっているアパレルCADがあればそれが最良なのですが、現在のところ実用的なCADでそういったものはありません。
最後のアップデートが何年も前に終わっているCADも永続性に問題があります。
OSや開発言語は常に進化しているので、アップデートが終了したCADはいずれ使えなくなります。
何年もアップデートしていないと、開発担当者がいなくなってしまったり、いても忘れてしまっているのでアップデートは難しくなっていきます。
永続性を重視して、自分が作ったパターンデータを長く使いたいのであれば、フリーソフトは諦め、企業が販売しているCADを購入して使うことをお勧めします。
ただ、企業もなくなってしまう可能性がゼロではないので、リスクもゼロにはなりません。
信頼性でCADを選ぶ
バグが少なく、かつ問題があってもすぐ対応してもらえることを期待するのであれば、フリーソフトは選択せず、企業の販売しているCADを購入しましょう。
アウトプットでCADを選ぶ
個人でアパレルCADを使う場合、普通の服以外にも使われる方がいらっしゃいます。
犬などのペット用の服を作る、コスプレ衣装を作る、ドールの服を作るなどです。
CADは普通パターンの線データを出力しますが、洋裁CADは他の形でも出力ができます。
「テキスタイルつきのパターンを作る」
洋裁CADはパターンをイメージデータにして絵柄付きのパターンを出力することができます。これを布にプリントすれば、オリジナルのコスプレ衣装が作れます。
「レーザーカッターで裁断する」
洋裁CADはレーザーカッターように最適化したDXFファイルを出力することができます。レーザーカッターをで布を裁断すれば型紙を作る必要がなくなります。
人様の布が切れる大きなレーザーカッターは高価で場所も取りますが、ドール服なら安価で小さなレーザーカッターが使えるので便利です。
アパレル3DCAD
アパレルCADも3D化が進んでいて話題になっていますが、かなり誤解もあるようです。
「3Dモデルをコネコネしたらナニカすごいものが出てくる」
ようなことはありません。
CLO3Dというソフトが有名ですが、これは本来製図するためのソフトというよりも、シミュレーションをするためのものです。
他にクレアコンポ2の3Dフィッテイングソフトがあります。洋裁CADは3Dモードを開発中です。
二次元のパターン作ってから、それを縫い合わせて三次元に仕立てることがすべての3Dソフトで共通しています。
二次元の布を使って三次元にするので当然といえば当然なのですが、3次元から二次元のパターンを作るソフトは今のところ存在していません。
なので、3Dであっても二次元でパターンを製図した後に3次元化するという手順になり、二次元を外すことはできません。
今後しばらくの間は2次元のパターン製図がなくなるということはないでしょう。
3Dなら簡単に服のパターンを作れるということはなく、煩瑣なパターン製図を避けて通ることは難しいです。
最終更新日: 2020-05-21 14:27:59