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洋裁CAD三次元化の目的と使い方
洋裁CADはリリース16から初歩的な段階ではありますが、3次元モードを利用できるようになります。
このページでは三次元化の目的と使い方について説明しています。
三次元化の目的
二次元での標準的な製図方法は、原型型紙を用いたものです。あらかじめ着る人の体にフィットした原型型紙を作っておき、この原型に必要な余裕を加えて服のパターンを製図します。
原型型紙が着る人にフィットしていることは確認済みなので、これをもとに余裕をつけて製図した服は、意図通りの余裕がついていることが期待できます。
しかし、本当に意図した通りの着心地になっているかどうかは、パターンを布に写して縫い合わせ、着てみないと確認できません。
また、製図段階で丹念に確認していても見落としはあるものです。縫い合わせてから初めて寸法が間違っていたり形状が違っていたりすることに気づくこともあります。
寸法が間違っていなくても、なんとなくシルエットが意図していたものと違うということもあります。
うまく修正できるケースもあるでしょうか、大きな違いがある場合は、パターンに戻って修正し再度布を裁断する必要があります。
布を切る前にCADの中で製図したパターンを縫い合わせ、三次元の人体データに着せることで、こうした間違いを見つけたり、シルエットが意図通りであるかどうか確認し、
作り直しのリスクを回避することが3次元化の目的の一つになります。
三次元を加えることで製図の手間は増えてしまいますが、修正による作業の減少を考えれば、トータルで効率的に服を作ることが可能になります。
パターンの修正は洋裁CADの得意とするところで、以前より数値を変更するだけで二次元パターンの変更が可能でしたが、これを3次元に拡張して、数値を変えるだけで三次元形状まで変わるようになっています。
なので3次元形状を見ながら数値を変えてパターンを変更し、その場で変更後の三次元形状確認することが可能です。
問題点
三次元でチェックできるからといって、全てのリスクを回避できるわけではありません。
3次元上でシミュレートされる布の物理特性は実際に使う布とは異なるため、実際より伸びて見えたり逆に伸びなかったりします。しわの寄り方なども実際の服とは異なってきます。
パターンを着せる人体データは、実際に着る人の3Dスキャンデータを用いることが望ましいです。
人体データの形状が着る人より大きく異なっている場合は、3D上でフィットさせても現実の世界では合わないので、あまり意味がなくなってしまいます。
人体の3Dスキャンをしてくれるところはいくつかありますが、地方にはなくまた費用も結構かかります。
自分の33Dデータを用いても、それが必ずしも正しいとは限りません。時間が経てば体型が変わったり太ったり痩せたりします。
なので、厳密に現実と3次元世界のギャップをなくすことはできません。確実に確認するのであれば従来のように仮縫いする必要があります。
服と体の間には適切な余裕が必要になります。余裕量はCADではなく人間が決めます。
3次元断面を見ながら、パターンを修正すれば余裕量を調整できますが、小さくしすぎてしまえばきつくて動くことができなくなります。
CADはあくまでも道具なので、何も考えなくても服ができるというわけではありません。
上の動画は、ウエスト660mmの人体モデルに適合する寸法でサイズした文化式女子原型を着せています。
ウエスト断面では人体周長660㎜に対し、原型は740㎜あって、余裕は80mmです。これが最低限必要な余裕量と思われますが、3D断面だけで最適量を判定するのは難しいでしょう。
動画では、原型のウエストを580mmにして、余裕をほぼ0にしています。3Dで見ると人体にピッタリですが、実際に着たらきつくて動けないでしょう。
別の使い方
この魚型のがま口かばんは以前私が作ったものです。パターンを決めるのに何回か紙に出力して貼り合わせで試作をしました。
こうした形状のものは二次元のパターンから仕上がりの3次元形状を予測するのは難しいです。
このパターンを3次元化してみるとこんな感じになります。
ぬいぐるみなどのパターンを作るときもこんな感じで三次元で確認すれば効率が上がるでしょう。
一般的なサイズでパターンを作っておき、着る人の3Dデータを取り込んで、パターンをその人用に修正して出力すれば、オーダーサイズの服を素早く作ることができるようになります。
こんなことはできません
洋裁CADでは2次元のパターンを三次元にして確認後、再び二次元のパターンとして出力しています。
モデリングソフトで作った三次元の服を二次元のパターンに変換したら、製図が出来なくても服を作ることができて便利そうですがこうしたことは洋裁CADではできません。
シミュレーションソフトのCLO3Dも同様に二次元のパターンを三次元にしています。今のところ3次元から2次元のパターンを作るというソフトウェアは存在していないようです。
最終更新日: 2020-05-27 09:44:09
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